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Issue Vol. 4 — 「Japanese」という言葉を考える〜生きている日本文化とは何か〜

  • 7月28日
  • 読了時間: 5分

Gastronomy is Not About Haute Cuisine


ヨーロッパで暮らすようになってから、「Japanese」という言葉の使われ方について考えるようになった。日本人が営む日本料理店や抹茶カフェへ行くと、「IKIGAI」「ZEN」「DO」「WABI-SABI」といった言葉を目にすることが多い。日本らしい器や空間、美しく整えられたインテリアとともに、それらは一つの「Japanese」という世界観として提示されている。


しかし、その光景を見るたびに、どこか引っかかるものがある。そこには日本を象徴する言葉は並んでいる。しかし、それらがどのような暮らしの中から生まれ、どのように今も生きているのかという文脈は見えにくい。おそらく、それは私自身が「禅」や「侘び寂び」を意識して生きてきたわけではないからだと思う。日本文化は展示される概念ではなく、今も日常の中で繰り返されている生活そのものではないだろうか。


海外では、「日本人は何教なのか」と尋ねられることがある。以前の私は、「特に宗教はない」と答えていた。しかし、日本の歴史を学び直すなかで、その答えは少し違っていたのではないかと思うようになった。日本人は、特定の宗教を持っていないのではない。日本では、神道や仏教、禅、儒教をはじめとするさまざまな宗教や思想が、明確な教義として意識されるよりも、食事の作法や人との接し方、季節の行事など、日常の振る舞いの中へ溶け込んできた。私たちは、それらを「日々の生活の作法」として受け継いできたのではないだろうか。

「いただきます」と言うこと。茶碗に米粒を残さないこと。肘をつかずに食事をすること。仕事を終えた人に「お疲れ様です」と言いながら頭を下げること。白米とおかずを一緒に口へ運び、口の中で一つの味として完成させること。盆の上で、それぞれの器の位置が決まっていること。

私たちは、こうした振る舞いを「日本文化」として意識することはほとんどない。しかし、海外へ出ると、「なぜ自分だけこう振る舞うのだろう」と初めて気づく瞬間がある。文化とは、知識として説明できるものだけではない。身体が自然に覚えている動作や所作、何気ない判断や習慣の中にも受け継がれている。

イタリアで暮らすようになってから、同じようなものが、この国にもあることに気づかされた。古くなったパンも大切に使い切ること。日曜日に家族で囲む昼食を優先順位高く持つこと。乾杯をするときに互いの目を見ること。その背景をたどると、宗教や歴史、家族や共同体との関係が折り重なり、現在の暮らしを形づくっていることが見えてくる。


そして、もう一つ考えたことがある。現在の日本の若者が送っている生活もまた、日本文化なのではないだろうか。学校帰りにアイスクリームやフラペチーノを買い、プリクラを撮ること。金曜日の夜にチェーンの居酒屋へ行き、ハイボールや梅酒を飲みながら、だし巻き卵や焼き鳥を囲んで長い時間を過ごすこと。

コンビニで酒とつまみを買い、終電を逃したあとにカラオケへ向かうこと。ダイエット中だからと、こんにゃくゼリーや鶏のささみを選ぶこと。夏祭りやビアガーデンの季節になると平成の音楽を聴きたくなり、ラムネソーダを見つけると理由もなく気分が高揚すること。喫茶店のナポリタンや固めのプリンを懐かしく思うこと。こうした「ZEN」や「DO」には遠い何気ない日常も、海外ではそのまま再現することのできない、「今の日本」を形づくる生活文化である。文化は、過去から受け継がれてきたものだけではない。現在を生きる人々の習慣や消費、記憶、感情もまた、文化をつくっている。

そして、文化は未来へも続いている。魚の資源問題、農業の担い手不足、気候変動による食材や生産環境の変化。日本の食文化もまた、これらの課題と向き合いながら、これからも姿を変え続けていく。 だから、海外へ伝えるべき日本は、「伝統」だけでも、「流行」だけでもない。


Tradition——受け継がれてきたもの。 Trend——今、人々が実際に送っている暮らし。 Movement——これから生まれようとしている変化。

この三つが重なって、初めて「今の日本」という文化が見えてくる。

ヨーロッパでは、現在麹や味噌をはじめとする日本の発酵文化への関心が高まっている。ベーカリーでは味噌が焼き菓子やクロワッサンに使われ、パンや豆など土地の食材を用いた味噌も作られている。

これは単なる日本食の模倣ではない。日本で育まれた知恵が、異なる土地の食材と出会い、新しい文化へと翻訳されているのである。日本の知恵を学び、それぞれの土地で受け継ごうとする海外の料理人や生産者との協働もまた、日本の食文化の未来を形づくる一部となる。

彼らが知りたいのは、「日本には味噌がある」という事実だけではない。どのように作られているのか。なぜその知恵が生まれたのか。どのような暮らしの中で使われてきたのか。そして現代では、どのように再解釈され、新しい食文化へと発展しているのか。そうした背景や変化の過程にこそ、人々の知的好奇心を刺激する力がある。

Mercato Metropolitanoが伝えたいのは、分かりやすい「日本らしさ」を探し出し、「Japanese」というラベルを貼って展示することではない。

私たちは、「なぜ現代日本人は、それを当たり前のように行っているのか」を問う。

その習慣や味覚、所作のルーツをたどり、歴史や暮らしとのつながりを読み解いていく。その先で初めて、それが日本社会の中で長く受け継がれてきた感覚であることに気づく。伝えるべきなのは、固定された日本のイメージではない。過去を受け継ぎながら、現在を生き、未来へ向かって変化し続ける「生きている日本」なのである。 私たちの旅をフォローしてください:@movimento.metropolitano.


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