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食育:日本の学校給食を考える

  • 3 日前
  • 読了時間: 8分

Lost in Translation: Life of a Japanese Girl in Italy


はじめに:「食育」という概念  「日本には『Shokuiku』があるよね!?」 ある日台湾のクラスメイトにそう言われ、私は驚きました。日本の「食育」という言葉が、海外でも注目され、共通言語になりつつあるとは知らなかったからです。 2005年に施行された「食育基本法」。正直に言えば、日本で育った私にとって、それが何を指しているのか今いち掴めていませんでした。 現在、私はイタリアで生活しています。最近、多国籍なクラスメイトとのグループプロジェクトをきっかけに、日本の学校給食制度を改めて見直しました。そしてそれこそが、究極の「身体で覚える教育」であったことに気づきました。 1. 「自校調理」というハード✖️「人の温かさ」というソフト 日本の給食の大きな魅力は、多くの学校が校内に調理室を備えている「自校調理方式」にあります。授業中には、廊下に漂う香りや音が子どもたちの五感を刺激し、自然と食への関心を引き出します。 また、日本では「栄養教諭」という制度が整備されており、学校への配置が進められています。彼らは単に事務室でカロリー計算を行う栄養士ではなく、教員免許を持つ「食の先生」です(すべての学校に配置されているわけではなく、地域や学校の状況によって異なります。)教壇に立って食に関する授業を行うだけでなく、給食の時間には教室を巡回したり、校内放送を通じてその日の食材や栄養について伝えたり、食育の中心的な役割を担っています。

キッチンと教室をつなぐ栄養教諭や調理員の存在により、給食は単なる食事ではなく、生きた知識を学ぶ体験へと昇華されているのです。 日本の給食は、1日に必要な栄養の約3分の1を満たす「一汁三菜」の献立を、内容が重複しないよう緻密に設計されています。

多国籍の友人たちの話を聞いて驚いたのは、海外の給食では冷凍のチキンナゲットやチャーハン、フライドポテトが提供されることも珍しくないということです。かつてアメリカでは、バラク・オバマ政権下でこうした状況を改善するため、厳格な栄養基準が導入されました。しかし、栄養素という「数字」を重視するあまり、子どもたちの好みとの大きな乖離が生じ、結果として大量の食べ残し(フードロス)を生むという皮肉な事態も起きました。


日本の給食が優れている理由の一つは、「顔の見える関係」にあります。栄養教諭が食材について説明し、子どもたちが「美味しかったです」と調理員に言葉を伝える、そうしたやり取りが日常的に生まれています。数字だけでは埋めきれない価値を補っているのは、「誰かが自分のために作ってくれた」という実感だと感じます。


そして、毎月事前に配布される「献立表」は、家庭と学校をつなぐ共通言語です。献立表には、食材や産地、カロリー、栄養素などが記載されています。子どもは配られた日から自分がお気に入りの給食が出てくる日を楽しみにし、親はそれを見ながら日々の夕食のメニューを考えます。給食は単なる栄養摂取の場ではなく、温かなコミュニケーションを生み出す拠点でもあるのです。

2. 味覚の再定義:マーケティングからの解放と「共食」 全員が同じものを同じ教室で食べる。そこには、経済的背景による「ランチ・シェイミング(食事による恥)」は存在しません。同じ食事を囲み、出汁の旨味や旬の苦味を一定期間共有することで、子どもたちは共通の味覚を育んでいきます。これは、超加工食品などの不健康な食事から身を守る、一生ものの防衛能力となり得ます。 さらに、季節の移ろいを感じ、仲間や先生との関わりの中でマナーを学び、共通の思い出を形成していきます。大人になっても「給食で何が好きだったか」という会話が弾むのは、給食が社会全体で子どもを育てるインフラとして機能している証拠です。私はジャンボ餃子とわかめごはんが好きでした。 一方で、現代の子どもたちの味覚は、大手食品企業のマーケティングによって形成された「お子様メニュー」から少なからず影響を受けています。唐揚げやフライドポテト、甘い駄菓子などは魅力的であり、個人の選択の自由のもとでは選ばれやすくなります。その結果、食の選択は特定の味や食品に偏りがちです。さらに、保護者にとっても手間の少ない選択であるため、この傾向は強化されやすいと言えます。

このように「食の個別化」が進む中で、給食のような集団での食事は重要な意味を持ちます。

栄養バランスのとれた食事を共にとる経験は、偏りがちな食を社会的な営みへと開き、より健康的な食のあり方を支える一つの解決となります。 3. 「給食当番」が育む市民意識(シチズンシップ) 日本の子どもたちは、授業が終わるとすぐに手を洗い、自分たちで机を並べ替え、配膳を行います。食べ終われば、片付けや掃除も自分たちの手で行います。海外のカフェテリアのように、「座っていれば誰かが運んでくれる」という仕組みではありません。


給食の配膳の列に並ぶ小学校時代の私です
給食の配膳の列に並ぶ小学校時代の私です
この日常の中で、「自分の役割を果たすこと」や「公共の場を自分たちで整えること」を学びます。こうした6年間の積み重ねが、民主主義の基礎となる市民意識(シチズンシップ)を自然と育んでいきます

また、班のメンバーと毎日食事を共にすることで、友達の苦手なものや適切な食事量を理解するようになります。役割分担を通じて、食べ物の分配や交渉の感覚を身につけていきます。 普段は飲まないのに、余った牛乳を誰が飲むかを決める「牛乳じゃんけん」に、あれほど真剣に取り組む姿も、今振り返れば立派なコミュニケーションの一つでした。食を楽しいイベントへと変える子どもたちの力が、結果としてフードロスの削減にもつながっていたのです。 4. 「いただきます」に込められた哲学 私たちは食事の前に、必ず手を合わせて「いただきます」と言います。これは単なる合図ではなく、食材となった「命」への感謝と、生産者や調理に関わる人々への敬意が込められた言葉です。私が小学生だった頃は「完食するまで外に遊びに行けない」といった指導も見られましたが、現在では一人ひとりの適量を尊重する考え方へと変化しています。それでも、お米一粒も無駄にしない精神や、ご飯とおかずを口の中で混ぜ合わせて味を完成させる、日本独自の「口内調味」を体現する「三角食べ」の習慣は、今も大切に受け継がれています。

東京の中心にある小学校の一角に設けられた田んぼで、1年をかけて米を育て、収穫したお米でおにぎりを作った記憶。班の友達と笑いすぎて食べ物をこぼし、先生に叱られた記憶。

教科書で学んだ知識はやがて薄れていくかもしれませんが、給食の時間に自然と身についた「他者への配慮」「段取り」「感謝」の心は、これからも消えることなく、自分の中に残り続けるのです。

5. 世界の給食から学ぶ 世界中の友人から学ぶことがたくさんありました。ブラジルでは、給食予算の30%を地元農家から調達することが義務化されています。台湾では、「Meat-free Monday(肉なし月曜日)」の導入や、QRコードなどを活用し、食材の透明性を高める取り組みも進んでいます。こうした事例は、日本の食育に「持続可能性」や「社会の循環」といった新たな視点をもたらします。


日本では、2026年から公立小学校の給食費が基本的に無償となっています(基準費用を超えた分に関しては保護者負担)。それまでは保護者が負担していた給食費が自治体の負担となることで、家庭の経済的負担は軽減されました。しかしその一方で、財政的に余裕のある自治体では給食の質の向上が見られる一方、そうでない自治体では物価高騰の影響を受け、品数や食材の質が低下しているとの指摘もあります。本来、すべての子どもに平等に提供されるべき食育の機会が、地域によって左右されかねない状況にあると言えます。自分が小学校で受けてきた食育が、これからの未来の子供たちが受けられないのはとても悲しく感じます。 6. 消費者から当事者へ:フランスに学ぶ「自給」の未来 これからの食育を考える上で、フランスの取り組みは参考になります。ムアン=サルトゥー市では、自治体が農地を確保し、農家を公務員として雇用しながら、学校専用の畑を運営しています。日本の学校にも田んぼや畑はありますが、それらを単なる体験学習にとどめるのではなく、日々の給食を支える「生産拠点」として活用する可能性があるのではないでしょうか。「先生に怒られるから」ではなく、自分たちが育てた食材だからこそ大切にしたい。そうした当事者意識が、結果としてフードロスの削減にもつながっていきます。さらに、このような自給型モデルは、日本が現在直面している「予算による制約」や「地域格差」を乗り越える一つの可能性にもなり得ます。外部調達への依存を抑えることで、より持続可能で安定した給食運営に近づくことができるのです。 結論:食育の未来へ 「いただきます」という言葉に込められた感謝を、単なるマナーで終わらせない。それは、自分が食べたものがどう地球に還り、どう地域を豊かにするかを知る「究極の教養(フードリテラシー)」であるべきです。  日本が誇る「システム化された分かち合い」に、世界が実践する「自給・循環・透明性」の取り組みをインストールする。学校を、地域最大のレストランであり、世界とつながる農場であり、未来を創る教室へと再定義すること。食べ物の向こうに広がる広大な世界を想像できる「食の市民」を育むこと。それこそが、私が夢見る食育の姿です。


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