なぜ私たちは健康を機能単位で買うようになったのか
- 7月16日
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LOST IN TRANSLATION: LIFE OF A JAPANESE GIRL IN ITALY
ある日、イタリアのスーパーでヤクルトを見つけた。
思わず立ち止まった。「イタリアにもあるんだ。」 その後の食科学大学の授業で腸内環境について学ぶ中で、日本のスーパーやコンビニにおける乳酸菌飲料や機能性ヨーグルトの充実ぶりは、海外から見るとかなり特殊な存在なのだと知った。日本では当たり前だと思っていた光景が、急に奇妙に見えてきた。

私自身も、日本にいた頃「ヤクルト1000を飲めば二日酔いしない」と言う友人に影響され、飲み会帰りにコンビニへ寄ってせっせと飲んでいた時期がある。睡眠の質を改善する。ストレスを和らげる。内臓脂肪を減らす。免疫機能を維持する。花粉症対策。 「腸に良い」という一言では収まらないほど、一つひとつの商品が違う役割を掲げている。
先日、オランダの大学を訪れた。
オランダはサステナブルや健康志向の強い国だ。学食の冷蔵ケースには、アイスランドの伝統的な乳製品「Skyr(スキル)」が並んでいた。


一口食べて私の頭に浮かんだのは、子供の頃に大好きだった日本のバニラヨーグルトだった。世界の反対側で生まれた二つの乳製品が、同じ記憶を呼び起こすことが少し面白かった。パッケージを見ると、「高たんぱく」「低脂肪」「砂糖無添加」「乳糖不使用」と書かれている。しかし裏面を見ると、クリーム、加工でんぷん、ペクチン、香料、甘味料なども使われていた。伝統的な食品でありながら、現代の消費者が求める栄養条件に合わせて細かく設計されている。最初は、日本の機能性ヨーグルトとはまったく違う商品だと思っていたが、案外似ているのかもしれない。日本は「睡眠」や「ストレス」を売る。Skyrは「高たんぱく」や「乳糖不使用」を売る。言葉は違っても、健康を一つひとつの機能へ分解し、それを商品として売るという点では、とてもよく似ている。
もちろん、日本にはこうした市場が生まれた理由がある。
1991年、日本は世界に先駆けて特定保健用食品(トクホ)の制度を始めた。「体に良い」という機能を国が認める仕組みである。さらに、味噌や醤油、漬物など発酵食品を日常的に食べる文化があり、ヤクルトの創始者・代田稔博士が「病気になる前に防ぐ」という予防医学の考え方を広めたことも大きい。その結果、日本では乳酸菌は「お腹のため」だけではなく、睡眠やストレス、免疫など、さまざまな健康課題を解決する存在へと進化していった。世界的に見ても、ここまで細かく機能が分類された市場は珍しい。
腸は「第二の脳」と呼ばれ、健康にとって重要な臓器である。
一方で、腸に良いとされる飲料の中には、少なくない糖分や甘味料が含まれているものもある。善玉菌を摂りながら、同時に糖分も摂取している。アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようにも見える。近年では、乳化剤や人工甘味料などが腸内細菌や腸のバリア機能に影響を与える可能性も議論されている。さらに問題なのは、これが「液体」であることだ。液体の糖分は固形物よりも速く吸収され、血糖値の急激な変動を引き起こす。「健康のために飲んでいるもの」が、別のリスクを生んでいる可能性もある。台湾出身のクラスメイトによると、台湾ではヤクルトが大きなボトルで販売されていて、飲み過ぎが肥満の原因の一つとして話題になることもあるという。健康食品は、ときどき健康そのものと矛盾した姿を見せる。
アメリカ人のクラスメイトによると、最近は若者の間で砂糖の多い炭酸飲料が敬遠され、その代わりにコンブチャやプレバイオティクス・ソーダが人気を集めているという。今度は「菌」ではなく、その菌のエサになる食物繊維を摂ろうという考え方だ。ヨーロッパに住んでいても、コンブチャを至る所で見かける。

しかし、それらにも甘味料や加工成分を含む商品は少なくない。飲み物だけが変わり、「健康を飲んで解決する」という発想そのものは、あまり変わっていないようにも思える。
こうした現象の背景には、より大きな構造があると思う。
超加工食品を食べて腸内環境が乱れ、生活習慣病や肥満になる。その解決策として機能性食品が消費され、高額な薬代を払い、ジムに通ったりダイエット家電を買ったりする。問題と解決が同時に生み出され、消費が循環していく。これは単なるトレンドではなく、現代の食産業における一つのシステムなのだと思う。 スーパーを歩いていると、あることに気づく。
どの商品も、一つの強みを前面に押し出している。高たんぱく。脂肪ゼロ。低糖質。プロバイオティクス。食物繊維。カルシウム。市場は、一つの栄養素、一つの機能を商品にし、それぞれが、栄養という地図の一角を占領しようとしている。彼らは組み合わせまでは売れないからだ。
でも、本来の健康は、そのどれか一つで決まるものではない。何を食べるか。何と組み合わせるか。どれくらい食べるか。どんな生活を送るか。そうした全体のバランスの中でしか生まれない。その組み合わせを考える責任は、私たち消費者に委ねられている。 私たちはこれまでになく多くの「健康的な商品」に囲まれている。それでも、本当に必要なのは新しい商品を探すことではなく、毎日の食卓全体のバランスを見直すことなのではないだろうか。腸活とは、本来もっと複雑で、食環境全体の問題だと思う。ただ商品を選ぶことではなく、自分がどのような食生活を送るのかを考えること。毎日の食卓の積み重ねが、健康をつくっているはずだ。 私たちの旅をフォローしてください:@movimento.metropolitano.



