ガストロノミーは、高級料理のことではない。
- 4月27日
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Issue Vol. 1 — ガストロノミーを解体する:社会的に構築された「品質」
1.食の中心的価値
Movimento Metropolitano(MoM)は、単に美味しい料理を探求するだけの活動ではない。私たちは、ガストロノミーを「総合的な知の体系」として捉え、その視点から社会を考察する。
ラテン語の sapore(味わう)は、sapere(知る)と同じ語源を持っている。味わうことは、世界を知り、自分との感覚距離を近づけるプロセスそのものだ。かつて美食家ブリヤ=サヴァランが「We are what we eat(私たちは食べたものでできている)」と述べたように、食は人間を理解する助けとなる。現代の社会に即した「ネオ・ガストロノミー」を定義するためには、まずこの視点を持つ必要がある。
2.文化によって「構築」される品質
MoMが共有する核心的な視点は、「品質は食品に本来備わっている属性ではない」というということだ。むしろ、
品質とは、私たちの文化や文脈の中で「構築」されるものである。
「テロワール(食とその原産地の結びつき)」のように現在高く評価されている概念も、工場での大量生産に対する反動として台頭したに過ぎない。価値に対する見方は、場所や時代によって大きく異なる。
例えばブラジル人の同僚は、「私の国では、ヨーロッパやアメリカからの輸入品は、国内産よりも品質が高いと認識されがちだ」と言う。一方で、東京のような都市は輸入に大きく依存している。そのため、地産地消は究極の理想として掲げられる。これは普遍的な事実ではなく、環境によるバイアスなのである。
3.「本物」を定義する
歴史家マッシモ・モンタナーリが示唆するように、食文化は本質的にハイブリッド(混成)である。それは常に混ざり合い、進化している。現代のグローバルなシステムにおいて、固定された「伝統」や純粋な「起源」を定義することは、ほぼ不可能である。
私たちは、2つの異なる概念を区別しなくてはならない。
⚫︎ 品質(Quality):私たちが信じている内的な価値。 ⚫︎ 正統性(Authenticity):他者が認めるための外的な検証。
「正統性」とは、境界線である。 人間は、権力やマーケティングのためにこの線を引く。それは物語として機能し、外部の消費者に安心感を与えるために「本物」を提示する手段となるのだ。 4. 境界を超えたアイデンティティ
ピエモンテ州アルバ近郊にあるワイン生産者は、名高いバローロ地区のすぐ外側にブドウ畑を所有している。有名な名称を使えないため、彼らはその境界線を逆手に取った。現在、彼らは「Drink Wine Not Labels(ラベルではなくワインを飲め)」というブランドで活動している。 これこそが、ネオ・ガストロノミーの真髄である。市場の外側的なラベルから、製品の内的な価値を取り戻すことである。
5.市場によって創られる「本物」 「本物」を巡る戦いは、グローバル市場の至る所で見られる。抹茶ブームはその象徴的な例だ。
本物の抹茶は、(玉露のように)覆下栽培された茶葉と、その後さらに石臼による粉砕を必要する。それは、驚くほど時間のかかる手作業のプロセスだ。しかし、グローバル市場では、機械で粉砕された安価な緑茶の粉末が、同じラベルを貼られ高値で取引されている。
これは単なる「フェイク」の問題ではない。「消費者は実際に何を消費しているのか?」を問う必要がある。多くの人は構築されたイメージ、つまり、「映え」や「ウェルビーイング」の雰囲気、あるいはカフェのトレンドを求めている。本物とは絶対的な真実ではない。それは市場の需要と権力構造によって書き換えられる境界線なのである。
6. 「ネオ・ガストロノミー」への第一歩
ガストロノミーは、単に美味しいものを体験する旅ではない。味の背後にある物語を解読する知的冒険である。
私たちは問わなければならない。
「誰が、どのような目的で、これを『本物』と定義したのか?」
信頼のシステムは国や地域によって異なる。ヨーロッパは厳格な認証制度に依存し、日本はしばしば国内生産や大手メーカーを信頼の盾として利用する。あらゆる食の背後には、権力構造とナラティブ(語り)が存在する。
ネオ・ガストロノミーは、アイデンティティ、伝統、本物という3つの言葉を解体することを求めている。私たちは、それらの背後にある意図を見極めなければならない。
スーパーマーケットで商品を手に取るとき、ふと立ち止まってみてはどうだろうか。その商品の背景を少し考えてみてほしい。
Movimento Metropolitanoは、この知的なプロセスこそが、食の持続可能な未来への第一歩であると信じている。
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参考文献
• ブリア=サヴァラン, ジャン・アンテルム. (2015). 『美味礼讃:あるいは、超越的思想としてのガストロノミーに関する瞑想』 序文:カルロ・ペトリーニ(スローフード協会創設者), スローフード・エディトーレ刊.
• モンタナーリ, M. (2006). 『食は文化である』 コロンビア大学出版局.
• ブレムゼン, A. フォン. (2023). 『ナショナル・ディッシュ:食と歴史、そしてわが家の意味をめぐる世界の旅』 ONE出版.



